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 誰を見ても自分より不幸だと思わせる者はいない。一番安いハンバーガーをひとつだけ注文し、飲み物は公園の水道水ですませるサラリーマンがいると聞いたことがある。なるほど、気づかなかったが、店内にもそれと同じだととれる人物が数多く見受けられる。それでも食事が喉を通るだけ、やはり、幸せだ。宗像は置かれたコーヒーをぼんやりと目に映しながら、ただただ、呆けた。 「アンノーンって知ってる」  右隣りに固まっていた中学生五人のうちの女の子が、ひとり興奮気味に話を切りだした。連れの男子はくだらない都市伝説だと鼻で笑ったが、テーブルに肘をついて身を乗りだしている。ほかにもまたかといいたげに顔をしかめる生徒もいたが、みんな一様に話をはじめた女子中学生を大声でからかいながら注視していた。  日ごろから宗像は今どきの子どもたちが不思議で仕方なかった。自分がこのくらいの時分になど、こんなに落ち着きがなかっただろうか。自分に正直といえば聞こえはいいが、ちょっとしたことで表に出る心がころころ変わる。要するに感情の揺れ幅が狭いのだ。だからこそ、すぐにきれて暴力をふるう子どもが多いのではないか。あつしもそうだったのか。家で眺めている限り、ゲームばかりやっていた。失敗しても、舌打ちひとつすることなく、楽しげに笑ってやり直していた。あれは親の前だったからなのか。友人と集まれば、こんな感じで周りを気にすることなくはしゃぎ声をあげていたのかもしれない。 「デジタル音楽プレーヤーにまつわる話なんだけど」 ――デジタル音楽プレーヤー。     
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