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 宗像は、ついこのあいだまでうるさいほどにつきまとわれた単語に心を奪われた。あれほど欲しがって手にいれたプレゼントを、存分に使うことなくあつしは逝ってしまった。怒られながら自分なりの選曲をして、きっと休み明けには遊園地にいった思い出とともに友だちに自慢をするつもりだったに違いない。今ではもう叶わないことだとあらためて思い知ると、胸が締めつけられた。  次から次へと新しく生みだされていく都市伝説に子供たちは何を求めているのだろう。昔からあった迷信には何かしらの戒めやら教訓やらが耶蝓されていた。今、都市伝説として語り継がれている話は単に恐怖を煽る手のものばかりだ。いかにも子供染みた、くだらない風説だ。  あつしがこの話を知っていたとしたら、やはり真に受けて確かめただろうか。吹きだしそうになったが、ある考えが胸のうちに膨れあがり、笑いを打ち消した。 ――噂を聞いたことがあった?  知っていたからこそプレーヤーを切望したのだとすれば、あの夜、何をダウンロードしたのか。あの日のあつしは心なしか様子がおかしかった。あれは何か起きていたからなのか。尽きもせず、また答えも出ないひとり問答は宗像を混乱に陥らせた。  温くなったコーヒーをひと息に飲み干すと、周りにあった椅子やらテーブルを蹴散らしながら急いで店を出た。中学生たちが不審な目をして、出ていく背中に声をひそめて野次を飛ばしていたが、気にしてなどいられなかった。     
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