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 家は静かに宗像の帰りを待っていた。玄関に靴を脱ぎ散らし、書斎にはいる。パソコンの電源ボタンに軽く指先を触れた。低い唸りをあげて起動するパソコンは、ここのところ具合が悪い。早くインターネットに接続したいと願っても、ままならない機械に気持ちは急くばかりだ。  香苗のパソコンかもしれない。キッチンへと駆ける。乱暴に起動ボタンを押す。逸る心を抑え、ディスプレイが明るくなるのを待ったが、kanaeの名前でロックがかかっていた。以前、PTAの寄り合いで外出すると香苗が電話をよこしたことがあった。大事な用件を記したデータがあるからパソコンを開いてほしいとパスワードを教えてもらったが、誰かの生年月日だか結婚記念日だかの日付だったはずだ。宗像、香苗、あつしの順に八桁の数字を打ちこむと、あつしの誕生日でロックが解除された。  インターネットに接続する。閲覧履歴を調べ、検索サイトのプレーヤー関連のページが事件当日までに開かれてないかを確かめた。――ない。  つかの間、胸をなでおろすが、そろそろ自分のパソコンが使えるころだ。書斎に戻る。ダウンロードサイトへのアクセスの閲覧記録はあったものの、『unknown』のページではない。あの晩、あつしとふたりで入ったものだ。     
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