2

10/13

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/114ページ
 身が震える。あの晩、あつしにはプレーヤー本体から直接ダウンロードするやり方は教えていない。いつこのページを開いたのだろう。朝か。やけにうれしそうにしていたのは遊園地にいけるからだと思っていたが、困難だといわれていた『unknown』を見つけたからではなかったか。恐るおそるマイページへのリンク先をクリックする。出てきたのはあつしが『誰も知らない歌』というタイトルのデータをダウンロードしたという履歴だった。  『誰も知らない歌』。見覚えのあるタイトルに頭を巡らせ、ハッとする。音楽プレーヤーをいじっていたときに消してしまった曲のタイトルだ。この曲を聞いたために事件は起きてしまったというのか。同時に、そんなことがあってたまるかと打ち消す、冷静を保とうとする気持ちが浮きあがる。単なる都市伝説だ。自分が子供だったころにもたくさんあった。口裂け女や、四時になれば学校のトイレに現れる四時ババアというのもあった。すべては噂でしかなく、成長とともに忘れ去り、同窓会など同い年と話をする際に意図せず顔を出しては懐かしむための種でしかない。子供のうちは現実と虚構の区別もつけがたくパニックに陥りやすいため、自分の想像やら夢やらの出来事をそのまま実社会に置き換えてしまうだけのことだ。けれども。     
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加