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 けれども、事故当日のあつしは確かにおかしかった。香苗がとめる言葉に耳を貸すどころか、抵抗する彼女をひきずって歩いた。事故場面を何度も思い起こしては、今さらながら息を飲んだ。成長過程でいくら力が強くなってきていたとはいえ、所詮はまだまだ子供だ。大の大人である香苗が本気を出せば、あつしの手を振りほどくことや、それどころかあべこべに引っ張り返すことなどまだまだ造作なかったはずだ。あのとき何が起きていたのか。  宗像は検索バーに「unknown 都市伝説」と打ち込み、Enterキーを静かに押した。  区立図書館は涼を求めて集まった人でいっぱいだった。朝の天気予報どおり気温はあがり、何をせずとも汗は滲みだした。ある一室では浮浪者の姿も見受けられた。クーラーの送風口前に立って動こうとしないため、そこだけは鼻をつく臭いに毒され、とりわけ人の姿は少なかった。  新聞をまとめた本はそんな部屋の一画にあった。過去の記事を縮小させ、数年ごとに分けて保管用としたものだ。いつ閲覧にいっても難なく目当ての記事を探すことができる。  『unknown』の話題がネット上に流れはじめたのは、ここ二、三ヶ月のことだ。そのころに起きたニュース、とりわけ容疑者が不可解な死に様を見せた事件を片っ端から調べあげた。異臭の立ちこめるなか、細かい文字に焦点をあてていると軽い目眩を覚えたが、家族に何が起こったのかを気にかければやめようとは到底思えなかった。     
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