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 この手の奴らは群れを作ると強くなったように感じるらしく、普段より鋭い目つきをして柄が悪くなる。ぱっと見は変わっても度胸や腕力といった要素が新たに追加されるわけでもない。結局、いざというときに何の役にも立ちはしない。達也はあらためて自分の考える法則が正しかったことを思い知った。だからこそひとりでいたにもかかわらず、多人数相手に喧嘩を売ったのだ。息を切らすこともない。身をすくめて震えている塊のうちのひとりを見据えた。 ――小者め。  頬を震わせていたかと思うと、奇声をあげながらまたたく間に走り逃げていった。それが合図だったかのように残りもいっせいに散りぢりになっていった。  ふと足もとに視線をむけた。白くて四角いものが落ちていた。拾いあげると今流行りのデジタル音楽プレーヤーだった。手にとって眺めていると、数人の警察官が怒鳴りながらこちらに駆けてくるのに気づいた。達也は液晶画面を指で拭いてプレーヤーをポケットにいれると、警官らとは逆の方向に渋谷の街を逃げた。  達也はけっして機械のことに詳しいほうではなかった。最低限のことはできたものの、それ以上のことをしようとするなら、マニュアルを読みこむ手間をとらなければ何もできなかった。加えて流行にも疎く、この手の機器に対しても、別段、胸が弾むこともなかった。     
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