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 宗像が一日かけて調べあげた記事は三ヶ月のあいだに八件あった。どこかにひっかかりを感じる事件記事はコピーをとり、日付順にまとめた。当然、調べていればふたりの事件もあがってきたが、記事に目をむける勇気は、到底持てなかった。  最初の事件は埼玉の志木で起きた。一九歳の男が容疑者。母親の左胸、腹部、背中を数回ずつ刺し死亡させたうえで、自らの頚部を切り落とした。凶器は台所にあった刃渡りたった二五センチメートルの包丁と見られ、首のないまま正座していた男の手に強い力で握られていた。動機不明、容疑者不在で書類送検される。  二件めは東京・小岩。新婚の男性が妻を自宅マンション一四階から突き落とす。妻が絶命したのを確かめてから自ら飛び降りるのを近所に住む住人が見ている。縦に落ちたせいで、そのままアスファルト舗装道路へ胸辺りまで埋もれさせたような形で着地。即死。容疑者不在で書類送検。  三件め。千葉県浦和市。老人介護にきていたデイサービスの四〇代女性ヘルパーが殺害される。それまで寝たきりだった九〇代の男性が容疑者と思われる。殺された女性は大柄で肉づきのよい体躯をしていたにもかかわらず、海老反りの形で背骨を折られていた。ほかに目立った外傷なし。容疑者は女性を殺害したあと、柱に刺されていた釘に眉間を打ちつけ、引っかかった姿で発見された。発見当初に息はあったが、意識不明。救急車にて搬送途中に死亡した。     
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