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 残りを読むことさえためらわれ、宗像は大きく深いため息をついた。目頭をつまむように指を置き、力をいれて奥に押しこむ。指を離し、ふたたび紙面に目を落とすと三件めの事件記事の横、わずかばかりのスペースを使ってデジタル音楽プレーヤーに関するコラムが記されていた。目を通すと、驚いたことに一件め、二件め、三件め、それらどの容疑者もプレーヤーやスマートフォン経由して音楽を楽しんでいたという話と、ファストフード店での噂と同じような内容の記事が書かれていた。スポーツ新聞などの大衆紙が都市伝説を記事にすることは過去に何度も見てきたが、一般紙だ。この記事を書いた人間は少なくともここ数ヶ月の猟奇殺人を一連の流れとしてとらえている。  宗像は立ちあがった。拍子に床のうえに集めた資料が落ちて広がった。体の奥部からくる震えに座りつづけることなどできなかった。散らばったコピーを掻き集め、拾いあげる。残りの五枚に目を通すと、あつしと香苗の事件記事の下にも枠を広げたコラムが掲載されていた。  誰が書いたのか。読み進めると記事の最後に担当記者の名前が載っていた。前田恵介。宗像は新聞社の代表番号を見つけると、携帯電話を内ポケットから取りだし、素早く指を動かして番号を押していった。
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