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 プレーヤーにしても、はじめのうちは同じだった。ホームページでいろいろ調べたうえで、パソコンを経由させて、持っていたCDのデータをつめこんた。検索して分からなかったことは、友人に訊ねた。達也が小さな白い箱を操作しているのを知ると、周りは意外そうな表情を浮かべ、からかいの声をあげた。そのたびに、ちょっとした苛立ちとともに快感を覚えた。  それまで、こんなくだらないものをなぜ高い金を払って買おうとするのかよくわからなかったが、手にしたときから周囲の目が明らかに変わったことだけは確かだ。徐々に仲間うちで達也がプレーヤーを手に入れたことが知れ渡ると、それぞれが選曲した音楽を互いに聞かせあった。達也がバイト代で最新の機種を買うまでに時間はかからなかった。  自分の金ではじめて購入したプレーヤーには格別の思いいれがある。眠っているとき以外、イヤホンを外しはしなかった。うるさい母親の小言も耳にはいらなかったし、とにかく暇を持てあますことがなくなった。  毎日が音に包まれていた。 仲間と連れだって渋谷を歩いていたときのことだ。すれ違いざまにほかのグループと肩がぶつかった。瞬間的に相手にむかっていき、否応なしに乱闘となった。そのときも、音楽はともにあった。耳のなかに響くリズムにのって相手を叩きのめした。     
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