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「お、まえ!ちょっとふざけすぎ!」
「あっはは!ゴメンゴメン。かわいくってつい」
そう言うと藤倉はゆっくりと手を伸ばし、するりと俺の頬を撫でた。先程まで弱い刺激を与えられ続けていたせいか思わず身体がピクッと反応してしまう。
それを見て彼は「ふふっ」と満足そうに目尻を下げると、恐らく真っ赤であろう俺の耳元に唇を寄せて囁いた。
「続きはまた今度、ね?」
「…するか馬鹿!!」
本当にこいつはスキンシップが過ぎることが多々あるが、今回はちょっと行き過ぎな、気がする…。
今まで友だちがいなくて距離感が分からなかったとかか?学校でも他の奴とつるんでるの見たことないし…。
変な声を聞かれてしまった羞恥心からか、俺はしばらくまともに彼の顔が見られなかった。
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澤が帰宅した後、ベッドにうつ伏せになり肺一杯に空気を吸い込むかのように匂いを嗅ぐひとりの男。
『ひゃっ?!』
先程録音した音声とこっそり撮影した写真、手のひらにわずかに残る素肌の感触と、ベッドに移った彼の匂い…。
あぁ、かわいい。堪らない。
彼に触れた指先にそっとキスを落として溜め息を吐いた。
よく我慢したなぁと、我ながら思う。
「全然抵抗されなかったな…」
自覚はあるのだろうか。自分の前で彼はとてつもなく無防備であるということに。
「おれの前でだけ…ならいいのに」
ぼそっと呟いた言葉は薄暗いひとりの空間に溶けて消えてしまった。
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