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「それにしても不思議だよなぁ」
「なにが」
「やー、お前って運動出来るし顔も別にぶさいくーって訳じゃないのになんでモテないの?」
「そんなこと俺が聞きたいんだけど。ってか小学生じゃねーんだし足が速いとかそんなんでモテるわけねーだろ」
「お前ってホンット自分に厳しいタイプだなぁ。もっと自惚れてもいいと思うぞ?俺はお前でも全然…ぐぇっ」
そこまで言いかけて友人が変な声を上げた。どうやら後ろから襟を引っ張られたらしい。ちょっと首が締まったらしく、軽く咳き込んでいる。大丈夫か?
「澤わりぃ!ちょっとこいつ借りるな」
そう言って友人らは何やら隅でこそこそ話し始めた。
何なんだろ。こっからじゃよく聞こえないな。
「ばっかお前!死にたいのか?」
「えっ?えっ?俺何かまずいこと言った?」
「言いかけたよ!もし藤倉くんに聞かれたらどうすんだよ?!」
「え?それって…?」
「やっぱ知らないのか…これは噂だけど、」
何やらすごく驚いた顔してるなあいつ。何の話だ?まぁいっか、今のうちに英語の予習でも…
そう思って机にノートを出すと、廊下から聞き慣れた声がした。
「澤くんいる?」
「おー、藤倉」
先程までこそこそ話をしていた友人らは何やらビクッと固まってしまっている。そいつらには目もくれず、藤倉が教室に入ってきた。
「これ、返そうと思って。次英語でしょう?」
「あぁ、ありがと」
「じゃあまた放課後にね」
辞書を返すと藤倉はさっさと立ち去ってしまった。
「澤くんのこと、よろしくね?」
教室から出ていく間際、藤倉が友人らに冷たく囁いた言葉は俺には聞こえなかった。
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