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「じゃあまた明日ね。あいしてるよ」
「またそういうこと言う!いい加減やめろってば」
爽やかにそう告げた彼の笑顔は今日も腹が立つくらいに輝いている。
電車の中で結構大きな声で言うもんだから何人か振り返ったんだけどこの変人はそんなことおかまいなしだ。
車内に彼を残して自宅の最寄り駅で電車を降り、改札へと続く階段へ向かった。
途中、ちらりと振り返ると彼はまだこちらを見ていた。
俺と目が合うと、とても嬉しそうにふっと柔らかな眼差しで微笑む。
余りにも綺麗な顔で笑うものだから、一瞬不覚にもどきりとしてしまった。
毎日毎日、飽きないなぁ本当。
ファンの子が聞いたら勘違いしちゃうんじゃないか…。
こうして毎日別れ際に俺に愛を囁く男、藤倉は学校でも知らない奴はいないくらいの有名人だ。
遠目にも分かる整った顔立ちにすらりと伸びた体躯。その目立つルックスはさることながら、学校の成績も常にトップを維持している。
噂では聞いたことあるけど、ファンクラブなんて学校にあると思わなかった。
しかもれっきとした部活と化しているらしい…。
そんな彼とは体育の授業でたまたまペアになり、そこから何となく仲良くなった。
体育は二クラス合同で行われ、競技ごとに適当にペアが割り振られる。
俺も運動神経だけは自信があるんだけど、テニスしてもバドミントンしてもキャッチボールしても、あいつとペアの時だけはラリーがずっと続くし思いっ切り動けるので楽しい。
とはいえ体育が一緒だったくらいで何故ここまで親しくなったのかは俺も覚えてない。まぁそんなもんだろ、友だちとか。
帰宅後ベッドに寝転び、先に課題でもしようか、いやゲームでもしちゃうかなんて思いながらぼーっとしていると、ふと別れ際のあの笑顔を思い出す。
花が綻ぶような笑顔。
友人に向けるには些か甘過ぎるそれは、まるで恋人に向けるような…って考えすぎか。
最初はクールな奴だと思ってたけど、一度心を開くととことん懐くタイプなのかもしれないな。
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