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第10話 眠りから覚める女
「――メグの意識が戻りましたよ。行きましょう、鳴海沢さん」
唯子に揺り起こされ、目が覚める。
随分と能力を使ったせいか、中澤を見送ったところで力尽きたらしい。そのまま、居眠りをしてしまったようだ。
寝言やうめき声をあげたら格好が悪い。妙な夢を見ずに済んでなにより。
病室の中は、さながら研究所だ。
身体に繋がる点滴回路やカテーテル、それに電極。周囲を取り囲むモニタの数々。電子音が規則正しく室内に響く。
あまりまじまじと眺めるのも失礼だろう。何しろベッドに横たわっているのは、唯子と同い年の女性だ。
だが、記憶は別。なんで中澤のような、下衆な男と一緒に暮らしているのかも興味深い。サングラスを外して、ベッドの脇から彼女の目を見下ろす。
「ユイ……。あたし、どうなってんの? 身体中痛くて……。達也は来てない?」
「中澤君は……えっと……」
口ごもる唯子。
親友という立場的にも話しづらいのだろう。ならばと、代わりにハッキリと伝えてやる。
「彼なら、警察に行ったよ。君を蹴り落としたことを、自首するそうだ」
「ああ、そっか…………。階段から落ちたんだ、あたし…………」
言葉をなくしてしまったらしい。
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