第1話 ホームでうつむく女

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 やや肩透かしを食った気分だが、後のことは任せるとしよう。 「相談なら乗るよ? どこか、場所を変えようか」 「…………」 「とりあえず、これ使いなさい」  親切な男だ。ハンカチまで取り出し始めた。  下心が見え隠れしないでもないが、何もせずに遠巻きに眺めている人々よりはましだろう。  親身になって励ます男と、頑なに口を閉ざす女。  行く末も少し気になるが、後は二人の世界。  ジロジロと覗き見るのも失礼なので、軽く背を向けて座り直す。  携帯電話を取り出し、時刻を確認する。  いい加減に、目当ての電車が来てもいいはずなのだが……。  そう思ったところに、アナウンスがタイミング良く流れる。 『特急電車が通過致します。危険ですので、白線の内側へお下がりください』  思わず出る舌打ち。  お目当ての電車は、まだしばらくお預けらしい。  近づいてくる電車の音、しかし出るのはため息。待っているのはお前じゃない。  立ち上がってしまったこと自体が気まずいが、仕方なく再びベンチに腰を下ろす。  入れ替わるように立ち上がる、隣の女。  何気なく見上げると、勢いよく駆け出していった。 「ちょ、ちょっと待――」  ホームから線路へと飛び出す女。  滑り込んでくる特急電車。     
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