第9話 目撃者の男

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「鳴海沢さん。お話っていったい――」 「川上さんはそこで待っていてください。ちょっと、二人きりで話したいんで」 「ユイ、よくわかんないけど、ちょっと行ってくる。なんかあったら頼むよ」  中澤は怪訝そうな表情で腰を上げると、三歩ほど後ろをついて歩く。  廊下に響く二人の靴音。  エレベーターホールを抜け、さらに奥の鉄の扉を押し開く。  軋んだ扉の向こう側は、階段の踊り場。  この時間なら、人も通らないだろう。 「どこまで連れ歩くつもりだよ。俺はそれどころじゃないんだけど」 「ここなら、お互い好都合ですかね。それじゃ、始めましょうか」 「始めるって、何を……」  やや怯えた様子の中澤。  不穏な空気を感じ取ったのか、やや気後れの様子。  充分に場は出来上がっただろうか。緊迫感が二人を包む。 「中澤さん、あなた……やりましたね」 「やったって……な、なにを……」 「とぼけるなよ。同じことをやってやろうか、あんたが彼女にしたことを……。この階段で――」  襟首をつかみ上げ、階段に向けて軽く押し出す。  もちろん本当に落としはしない。ただの脅しだ。   だがさらに声を荒げ、一気にまくしたてる。 「――突き落としただろ? あんたが、階段から彼女を!」     
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