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「鳴海沢さん。お話っていったい――」
「川上さんはそこで待っていてください。ちょっと、二人きりで話したいんで」
「ユイ、よくわかんないけど、ちょっと行ってくる。なんかあったら頼むよ」
中澤は怪訝そうな表情で腰を上げると、三歩ほど後ろをついて歩く。
廊下に響く二人の靴音。
エレベーターホールを抜け、さらに奥の鉄の扉を押し開く。
軋んだ扉の向こう側は、階段の踊り場。
この時間なら、人も通らないだろう。
「どこまで連れ歩くつもりだよ。俺はそれどころじゃないんだけど」
「ここなら、お互い好都合ですかね。それじゃ、始めましょうか」
「始めるって、何を……」
やや怯えた様子の中澤。
不穏な空気を感じ取ったのか、やや気後れの様子。
充分に場は出来上がっただろうか。緊迫感が二人を包む。
「中澤さん、あなた……やりましたね」
「やったって……な、なにを……」
「とぼけるなよ。同じことをやってやろうか、あんたが彼女にしたことを……。この階段で――」
襟首をつかみ上げ、階段に向けて軽く押し出す。
もちろん本当に落としはしない。ただの脅しだ。
だがさらに声を荒げ、一気にまくしたてる。
「――突き落としただろ? あんたが、階段から彼女を!」
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