第9話 目撃者の男

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「ひぃっ……。や、やってない。俺は階段を駆け上がろうとして踏み外したメグを、う、後ろから見てただけだって」 「階段を上ってる人は普通、転んでも下まで転げ落ちない。貧血で後ろ向きに倒れたならともかく、駆け上がってた最中だろ?」 「や、やってない……。し、知らない……、俺は知らない」 「いい加減に吐けよ。こっちは全部お見通しなんだよ――」  今度はつかみ上げた襟首を持って、そのまま壁に押し付ける。  中澤が顔を背けたので、強引に目を合わそうとすると、また反対側へと背けた。  目を合わせようとしないのは、後ろめたさがあるからだろう。 「――俺はさっき、あんたのアパートへ行ってきた。一階のおばちゃんが、色々と教えてくれたぜ」 「な、何をだよ」 「すごい音と共に彼女が階段を転げ落ちて、階段の一番下で横たわっていた。そして、あんたは階段の中ほどで茫然としてたってな」 「それが……、それが、どうしたっていうんだよ……」 「あんたは血まみれで横たわってる人を跨いで、わざわざ階段を上って茫然としたのか?」  演技派女優の証言と記憶の光景を、中澤に突き付ける。     
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