2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ひぃっ……。や、やってない。俺は階段を駆け上がろうとして踏み外したメグを、う、後ろから見てただけだって」
「階段を上ってる人は普通、転んでも下まで転げ落ちない。貧血で後ろ向きに倒れたならともかく、駆け上がってた最中だろ?」
「や、やってない……。し、知らない……、俺は知らない」
「いい加減に吐けよ。こっちは全部お見通しなんだよ――」
今度はつかみ上げた襟首を持って、そのまま壁に押し付ける。
中澤が顔を背けたので、強引に目を合わそうとすると、また反対側へと背けた。
目を合わせようとしないのは、後ろめたさがあるからだろう。
「――俺はさっき、あんたのアパートへ行ってきた。一階のおばちゃんが、色々と教えてくれたぜ」
「な、何をだよ」
「すごい音と共に彼女が階段を転げ落ちて、階段の一番下で横たわっていた。そして、あんたは階段の中ほどで茫然としてたってな」
「それが……、それが、どうしたっていうんだよ……」
「あんたは血まみれで横たわってる人を跨いで、わざわざ階段を上って茫然としたのか?」
演技派女優の証言と記憶の光景を、中澤に突き付ける。
最初のコメントを投稿しよう!