2人が本棚に入れています
本棚に追加
このあと中澤と目を合わせて真実を確認できたところで、本人がしらを切り通せば何の証拠にもならない。もちろん、警察じゃないから動かぬ証拠など必要はない。しかし、相手を屈服させるにはそれなりの材料が必要だ。
突き付けた状況証拠は効果があったようで、中澤は完全に沈黙した。
「…………」
力の抜けた中澤は重力に抗わず、壁にもたれたまま座り込んだ。
こちらも跪き、目の高さを合わせると、顎を掴んでこちらを向かせる。
(なるほどな、そういうことだったか……)
「あんた、普段から彼女に暴力振るってたな。DVってやつか。あの日も帰りが遅いって玄関で彼女を蹴り飛ばし、その勢いで階段から転げ落ちたってわけか」
「お前……見てたのか?」
「いや、目撃者がいたんだよ。思わぬところにな」
真実を確認し、その目撃者である中澤も屈服させた。
あとは仕上げだ。
「ありがちな痴話喧嘩だけど、あんたは今回ちょっとやりすぎたようだ。警察に突き出せば、立派な傷害事件として処理してくれるだろうな」
「…………」
「痴話喧嘩で終わらせるか、犯罪者になるか……全てはあんた次第だ。黙ってて欲しければ、考えてやらないこともない」
思い詰めた様子で、黙り込む中澤。
まだ一押し足りないか。
「あんた、今でもあの子に気があるんだろ」
「あ、あの子って……」
最初のコメントを投稿しよう!