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寝起きに聞かされるには、きつすぎる一言だっただろうか。だが取り繕ったところで、遅かれ早かれ知る事実。後は彼女次第。
そして、沈黙を続ける彼女。
今日はもう、これ以上話を聞くのは無理かと諦めかけたが、どうやら彼女は気を取り直したらしい。しげしげと顔を眺めながら問いかけられた。
「……で? あんたは?」
「この人は鳴海沢さんだよ。今回助けてくれた人」
助けたつもりは全然ない。
駆けつけた時には搬送済みだったし、手当てをしたのは医者だ。
中澤の自首だって結果論。本当は、金を巻き上げてやるつもりだった。
そして今だって、こうして記憶を覗き見ている。
やれやれ、複雑な人間関係が垣間見えてきたようだ……。
「鳴海沢和真です。たまたま居合わせたってだけで、感謝されるようなことはなにもしてないよ」
「ひょっとして……、ついにできた? ユイにも彼氏が」
顔を真っ赤にする唯子。
この間記憶を見た時も、男の影を感じないなとは思っていたが、やっぱりか。
だが、誤解は速やかに解いておくに限る。
「川上さんとは別に――」
「な、鳴海沢さんは……えーっと、高校生に絡まれてたところを助けてもらったのよ。それから、部屋探しをお手伝いして、父のことでもお世話になって……。えーっと、それから……」
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