第10話 眠りから覚める女

3/9
前へ
/113ページ
次へ
「あー……。こんな子だけど、よろしく頼むね。鳴海沢さん」 「だから、そういうんじゃなくて! ――」  ムキになる唯子。明らかに誤解がこじれた。  慌てず普通に否定すれば済むものを、なんであんなにうろたえるのか。  こうなると下手な否定は逆効果。放っておいた方がいいだろう。 「――こっちは鹿島(かしま) (めぐみ)。高校の時からの付き合いで、一緒に演劇部だったんです……って、この話はしましたね」 「うん、さっき車の中でね。  その演劇部の先輩の自殺現場を目撃したんでお通夜に行ったら、川上さんとバッタリ顔を合わせて、その流れでここへきたってわけです。自殺の理由はまだわかってないみたいだけど、何か知りませんか? 鹿島さん」  ずいぶんと遠回りをしたが、わざわざここまで付いてきた目的はこれだ。  中澤の件はただ働きだったし、せめて価値ある情報を入手したいところ。  眠気も再び湧いてきたので、ストレートに問いかけた。 「メグでいいよ。先輩の自殺の理由かー……たぶん、アレじゃないかなー。口止めされてたけど、本人はもういないし……。いいよね、話しても」 「え? なんか、ヤバい話なの? メグ……」     
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加