第10話 眠りから覚める女

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「ちょっと前にね、深刻な顔で相談されたんだ。お客さんのお金、使い込んじゃったって。絶対返さなきゃダメって言ったんだけど、もう使っちゃったから返せないって」  これは有力な情報かもしれない。苦労も報われたというものだ。  客の金の使い込み。発覚を恐れるあまり自殺。……充分にありえる。  使ってしまったということは、金が流れた先があるということ。もちろん、買い物をして使い果たしたという可能性もあるが、調べる価値は大いにある。 「私は、男の人のことで悩んでるって聞いたよ」 「えー、マジで? あたし、その話は知らないよ」  二人それぞれからの情報を併せて考えると、浮かび上がる一人の男。  まさか、再びあの男に用事ができるとは、思ってもみなかった。  どこかの湖にでも、沈められていなければいいが……。 「情報ありがとう。メグさん」 「『さん』とかいらないから。『メグ』って呼んで」 「高校入学の自己紹介でも、自分からあだ名指定してたよね。『あたしのことはメグって呼んで』って……クスクス」 「なによ、そんなことまで言わなくてもいいじゃない。だって、最初から気に入った呼び方指定した方が、みんなだって呼び方迷わなくていいし、あたしだって変なあだ名付けられなくて済むんだから、オールオッケーでしょ――」  昔話に突入か。必要な情報は得られたので、後は二人でご自由にどうぞ。     
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