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● スメルズ・ライク・ティーン・スピリット
実体を持たない僕は天に昇っていった。
やがて猫や人間と神の領域を分けるような成層圏を越え、地球を眼下に小さく見据え、星からの歌の伴奏たる闇とステージの輝きの瞬きさえ超えた。
そしてグングンと限界点を目指しながら、天と地の境界腺の意味さえ失い、やがて昇り切った果てに青い海に墜落し。大きな飛沫を上げた。
間違いなく上昇していた。なのに今は沈没している。
沈没しながらの姿勢で、水面で戯れる赤ん坊のような無垢を見上げていた。なんで彼らを無垢と呼ぶのかって尋ねられても困るけど。無垢の他に形容出来る言葉は見つけられない。
無垢たちには姿は在ったけれど、肉体は無かった。
彼らは、揺らいでいるけど気でもなければ水でもなかった。
彼らは、そよいでいるけど風でもなければ波でもなかった。
彼らは、果てなく広いけど空でもなければ海でもなかった。
ましてや彼らは、天でもなければ地でもない。
彼らは、浮かんでいるのか沈んでいるのかわからなかった。
彼らは、留まっているのか漂っているのかわからなかった。
ただ流されてしまわないように、彼らが一つに身を寄せているのは分かった。
「ここは何処なんだよ? 君たち誰なんだよ?」
僕は訊いた。
「僕ら? 僕らは僕であって、僕は僕らだよ。群れなのか一人なのかわからないけど、皆で一つの夢を見ているんだよ。功績や、罪や、賞賛や、報いの重荷を捨てた。言葉や知識の宝も捨てた。無垢に戻った僕らは非力ではあるけど身軽なんだ。どこにだって行けるし何にだってなれるんだ」
彼らは言った。
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