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・・・でも、私にはどうしても伝えないといけないことがある。
一瞬決心が鈍りそうになったが、自分を奮い立たせる。
「あの、理人さん!
こんなときに、こんなこと言うのどうなのかなって人格を疑われるかもしれないんですけど・・・」
「ん?なに?」と、不思議そうに私を見た。
「前に貸したペンを返してもらってもいいですか!」
「え?」
屋上がしん、っと静まり返る。
突如その静かな空間に、笑い声が響いた。
その笑い声は、理人さんでも私でもない。
屋上の出入り口の方から聞こえてくる。
ガチャリと扉が開いて、なんと日向が入ってきた。
こんなときにペンを返せと言ったことと、先程の話を聞かれていたかもしれないということで、私は屋上のフェンスを乗り越えたい衝動に駆られた。
「百瀬、なんでいるんだよ」
「その辺に携帯落ちてない?
それ取りに来たんだけど、入るタイミング見失った」
暗くてよく分からなかったが、確かにベンチの脚の近くに携帯が落ちていた。
理人さんはそれを拾い、日向へ渡す。
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