ハナミズキ

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「というわけで、日向とお付き合いすることになりました」 出勤時、葵に偶然会ったので理人さんのことも含めて簡単に報告した。 「いやいやいやいや、ということでって、どういうこと?!」 混乱する葵に「だから、さっき説明した通りのこと」と言い、赤信号で足を止める。 「てことは、伝えたかったことって、ペン返してくださいってこと?! かえってきてほしかったのって、ペンのことなの?!」 「うん。ペン返してくださいとか、ケチだと思われたら嫌だなって思うとなかなか言えなくて」 「それはそうだけど」 どこか腑に落ちない表情をしているが、私はさらに続けた。 「それに、そのペンお兄ちゃんから貰ったものだから、男の人に貸したってバレたら地の果てまで追いかけそうでしょ?」 そのあと「まぁ、何はともあれ、奏楓が幸せなら私はそれでいいよ」と呆れながらも言ってくれた。 「ちなみに、日向くんのどこを好きになったの?」 先程までの表情とは打って変わって、葵はニヤニヤとしている。 「あ、ほら!し、信号、青になったよ!」 赤くなった自分の顔を隠すように、早歩きで信号を渡った。 喋れば喋るほどイライラさせられるし、何考えてるか分かんないし、人のこと無視するし、猫みたいに気まぐれ。 だけど、ほんとは優しさをうちに秘めているとても不器用な人。 そんな彼が私は大好きだよ、と心の中で思いながら。 FIN
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