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通勤ラッシュの満員電車に揺られ、最寄駅で降りる。
改札を抜け、今日は特にスーパー寄らなくても大丈夫だったなと思いながら、真っ直ぐマンションまで歩いた。
前方に、同じく仕事帰りであろう奏楓の姿を見つけた。
なにフラフラ歩いてんの、危なっかしいんだけど。
すれ違う男にぶつかりそうになるところを見て、オレは眉間に皺を寄せ足を早める。
そのとき、足に何かが当たった。
下を見ると、赤色の画用紙が1枚落ちている。
ため息をひとつついて、それを拾った。
「なんで手で画用紙持ってんの、カバンに入れたら?」
奏楓に追いついたので、そう声をかけ歩道の車道側を歩く。
「あ、日向!おかえり」
「まだ家じゃないし。これ落ちてた」
「えっ!気付かなかった、ありがとう!」
そう言って、手にたくさん持っている画用紙の間に、オレから受け取ったそれを差し込んだ。
「だから、カバン入れれば」
「だって、カバン入れたら折れたり、ぐちゃぐちゃになるでしょ?そしたら使えるところが少なくなっちゃうの!」
「ふーん・・・ねぇ、もしかして前にもそうやって持って帰ったことある?」
「あるけど、どうしたの?」
「いや、別に」と答えると、奏楓はその返事に不満そうな顔をしたが、オレは構わず歩き続けた。
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