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「お兄ちゃん、私大丈夫だよ?」
「うん、携帯も持ってるしみんなで行くんでしょ?」
そう言うと、莉乃は首を横に振った。
「そうじゃなくて、お兄ちゃんがこの家に住んでなくても大丈夫だよ」
「なに?オレ、莉乃に追い出されるの?」
「違うの!」
「ははっ」と笑って、再度部屋へ行こうとすると、腕を掴まれた。
「もう風呂入って寝たいんだけど」
「お兄ちゃん、そうやっていつも誤魔化すもん」
正面を向き、莉乃の目線に合わせるように少しかがんだ。
「ちゃんと、聞いてるから」
「じゃあ、私が今から聞く質問に正直に答えてね」
「うん、ヤダ」
それに対して莉乃は「ちゃんと答えてね!」と怒った表情で言うので、ひとまず頷いておいた。
「毎日時間がかかる通勤は大変ですか?」
「まぁ、誰でも通勤は大変なんじゃない?」
「昨日は他の人は終電で帰りましたか?」
「あんまり覚えてない」
「本当は、もっと会社の近くで住みたいですか?」
「別に」
「・・・お兄ちゃんの嘘つき。
毎日長い時間電車乗って大変なの知ってるんだよ?
昨日だって家が近かったらこんな朝に帰ってくることなかったでしょ?」
涙目で訴える莉乃を、オレはじっと見つめていた。
「一人暮らし、してもいいんだよ?」
「・・・考えとく」
そう言い残して、今度こそ自分の部屋へ入った。
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