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「もう言ったから。心の中で」
「いや、オレに言えよ」
「ここの家主さんに話通しといて。また直接話しに行くから」
それだけ言って玄関へ引き返す。
「あ、あぁ分かった。もう帰るのか?」
「ワンルームに男と2人とか無理だから帰る」
「あのなぁ・・・
まぁ、とりあえず伝えとく。気を付けて帰れよ」
軽く頷いて、橘の部屋を出る。
エレベーターはまだ4階に留まったままだったので、下ボタンを押したらすぐに乗れた。
エレベーターを降りた瞬間、誰かとぶつかりそうになった。
なぜか画用紙を手にいっぱい持っている女の子で、フラフラと歩いている。
ぶつかりそうになった瞬間「あ、ごめんなさい!」とだけ言って、逃げるように慌ててエレベーターに乗り込んでいた。
変なやつ、カバンに入れればいいのに。
そう思って歩き出すと、黄色い画用紙が1枚落ちているのが目についた。
なんとなくその画用紙を拾って、壁に立てかけてからマンションを出る。
落とすくらいなら、やっぱりカバンに入れればいいのに、と考えながら駅へ向かった。
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