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同じ週の土曜日の夕方に、オレはとある中学校の門の前で腕を組んで立っていた。
部活帰りの集団の中にいる1人の男子生徒に声をかける。
その子は一瞬迷ったが、一緒にいた友達へ向かって「先行ってて」と言った。
2人で門から少し離れた場所に行って立ち止まる。
「こんなところでなんだよ、不審者か」
「背伸びたね、蓮」
蓮は不機嫌そうにオレを見る。
「だから、気安く呼ぶなっつってんだろ」
「あー、莉乃が下の名前で呼んでたから名字知らないし」
そう言うと、オレから目をそらして少し黙る。
「・・・それで、なに?」
「うん、ちょっと一応報告しとこうと思って。
オレね、引っ越すから」
「はぁ?!ふざけんじゃねぇぞ、莉乃から逃げんのか!」
周囲を歩いている人のうちの何人かが、蓮の大声に驚きこちらを見る。
オレはなんでもないですの意味合いを込めて、顔だけそちらへ向けぺこっとお辞儀をした。
蓮も気付いたようで、気まずそうな表情をする。
「いや、毎週日曜には帰るよ。
莉乃も普通に生活出来るようになってきたから」
「・・・そうか」
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