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「ところで、お兄ちゃん。
明日なんだけど大丈夫?」
明日は莉乃の所属している部活のコンクールがあり、開催場所はここから電車で1時間程のところ。
朝現地で集合の為、車で送って行ってほしいと、先週お願いされていた。
「あー、ごめん。明日仕事になった」
「そっかぁ、残念だけど仕事なら仕方ないね」
莉乃は残念そうにオレを見た。
「父さんは明日無理なの?」
「うん。このところ忙しそうにしてて、明日も仕事みたい。
でも、大丈夫だよ、電車で行くから!
乗り換え無しで行けるみたいだし、会場は駅の目の前なんだって」
そう言って、にっこりと微笑んだ。
「日向ー、莉乃ー!ご飯出来たよ。
ついでに、ちょっとこれ運んでほしいから来て」
キッチンから母さんの声がしたので、2人でソファーから立ち上がってそちらへ向かう。
ご飯を食べる頃には、もうこの話は忘れていた。
この判断がオレの人生最大のミスになるということに、このときは全く気付かなかった。
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