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仕事を終えて急いで病院まで駆けつけた。
病院の最寄駅からタクシーに乗ったとき、速度制限を守って走る運転手にすらイライラしてしまうくらい気持ちに余裕が無かった。
病室に入ると、母さんと姉の柚月がいた。
父さんはまだ来ていないようだ。
「あ、日向」
オレに気付いた姉ちゃんが声をかける。
母さんはひどく憔悴しているようで、チラリとこちらを見ただけで言葉は無かった。
「莉乃さっきまで起きてたんだけど、寝ちゃったみたい」
「で、大丈夫なの?」
「うん、命に別状はないって。
外傷もひどくはないんだけど、頭を強くぶつけたみたいで」
命に別状がないと聞き、ひとまずホッと胸を撫で下ろした。
「どこで事故ったの?」
「あぁ、今朝家から駅に行くまでの間に事故に遭ったんだけど」
姉ちゃんがそこまで説明したとき、今まで無言だった母さんが急に泣き出した。
「日向ぁ、莉乃は、莉乃はね、記憶喪失になったんだって!」
そう言ってオレに泣きつく。
そんな母さんの背中を姉ちゃんが優しくさすった。
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