《番外編》クローバー

14/21

192人が本棚に入れています
本棚に追加
/148ページ
莉乃が、記憶喪失? そんなことが本当に起こるのかと、まだオレは受け入れられずにいた。 そんなオレに、姉ちゃんがさっきの母さんの言葉を補足するように話し出す。 「・・・全部忘れたわけじゃないんだけど、ここ数年の記憶が無いみたい。 これから、詳しく検査しないといけないんだって」 着丈に振舞っている姉も、声は震えていた。 「あの子は、お、覚えてないのよ! 自分が今中学1年生だということだって、 小学校で行ったバス遠足だって、家族で行った旅行だって ・・・覚えてなかったのよ」 オレの胸元で母さんは、また泣きながらそう言う。 そんな母さんを見て思わずオレも泣きそうになったので、両肩をそっと持って近くにあった椅子に座らせた。 そしてここに来て初めて、眠っている莉乃の顔を覗き込んだ。 ・・・莉乃、ごめん。痛かったよね。 前々から今日会場まで送ってほしいって言ってくれてたのに、オレ仕事を優先して・・・ ちゃんと車で送ってたら、こんなことにならなかったのに。 ほんとに、ごめん・・・ーーー 後悔をしてもしてもしきれない。 自分を責めても責めてもまだ足りない。 やり切れない気持ちを抱えながら、莉乃の痛々しい顔をじっと見ていた。
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

192人が本棚に入れています
本棚に追加