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莉乃が、記憶喪失?
そんなことが本当に起こるのかと、まだオレは受け入れられずにいた。
そんなオレに、姉ちゃんがさっきの母さんの言葉を補足するように話し出す。
「・・・全部忘れたわけじゃないんだけど、ここ数年の記憶が無いみたい。
これから、詳しく検査しないといけないんだって」
着丈に振舞っている姉も、声は震えていた。
「あの子は、お、覚えてないのよ!
自分が今中学1年生だということだって、
小学校で行ったバス遠足だって、家族で行った旅行だって
・・・覚えてなかったのよ」
オレの胸元で母さんは、また泣きながらそう言う。
そんな母さんを見て思わずオレも泣きそうになったので、両肩をそっと持って近くにあった椅子に座らせた。
そしてここに来て初めて、眠っている莉乃の顔を覗き込んだ。
・・・莉乃、ごめん。痛かったよね。
前々から今日会場まで送ってほしいって言ってくれてたのに、オレ仕事を優先して・・・
ちゃんと車で送ってたら、こんなことにならなかったのに。
ほんとに、ごめん・・・ーーー
後悔をしてもしてもしきれない。
自分を責めても責めてもまだ足りない。
やり切れない気持ちを抱えながら、莉乃の痛々しい顔をじっと見ていた。
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