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それから何回目かの病院へ行ったとき、莉乃の病室の前に、男の子が1人で項垂れているのが見えた。
前に莉乃が言っていたのはこの子だと、直感的にそう思って声をかける。
「もしかして、きみが蓮くん?」
「・・・はい」
意志の強そうな瞳を持った爽やかな少年だった。
「莉乃から色々聞いてる」
「あ、お兄ちゃん?ですか?」
オレはその言葉にしっかりと頷く。
少し話さないかと彼を誘い、病院裏にある駐車場脇の自動販売機横にベンチがあったことを思い出して、そこに場所を移した。
自動販売機でペットボトルのお茶をふたつ買い、ひとつは彼に渡して、もうひとつはキャップを開けて自分で飲んだ。
「・・・覚えてないって本当だったんですね」
そう言ってお茶を一口飲むと、蓮はさらに続けた。
「友達から聞いてたんですけど、疑ってしまって。
自分のことは覚えてるんじゃないかって、期待して。
・・・オレ、バカでした。
現実を受け止める覚悟がないやつは、莉乃に会っちゃいけないんですね。・・・・よく、分かりました」
初対面であるオレの前で泣くまいとしているのか、時折目を見開き、唇をぎゅっと噛み締めながら話していた。
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