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数日経って、また病院で蓮の姿を見かけた。
実はあれから2回程、病院付近で蓮とすれ違っており、とりあえず「莉乃のお見舞い、ありがと」と声をかけていたが返答はなかった。
しかし今日は珍しいことに蓮の方から声をかけてきた。
「ちょっと顔貸せ」
そう言って前に話した自動販売機横のベンチまで歩く蓮の後ろをついて行った。
「蓮から声かけてくれるなんて、どうしたの?」
「なんで呼び捨てになんだよ!」
「んー、オレ、人のことをくん付けて呼ぶキャラじゃないから?」
「はぁ?意味分かんねぇ」と言いながらこちらを睨む彼の顔を改めて見ると、まだまだこいつは子どもなんだなと感じた。
「それで、なに?」
「あぁ・・・オレもう莉乃に会わないから。
・・・もう、会えない」
中学1年生の彼には荷が重かったのだろう、ということは容易に想像がついた。
オレは何も聞かなかった。
「その代わり、お前はオレの分までずっと莉乃の近くにいて支えろよ!
一人で勝手に幸せになんじゃねぇぞ!」
「分かった、約束するよ」
そう言い残して、オレはすぐにその場を立ち去った。蓮の背中が泣きたいから1人にしてくれと訴えていたから。
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