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何時ぞやの休日出勤の振替で午後から休みにしていた金曜日。
マンションにいても落ち着かなかったので、夕方に実家へ行った。
家の前まで行くと、珍しいやつを見つけた。
そいつは黙ったまま、家の方をじっと見つめている。
「蓮、どうしてここにいるの?」
そう声をかけると、一度オレを見てからすぐにくるりと背を向けた。
「先生に、場所聞いた」
それから一呼吸おいて、蓮は話を続けた。
「・・・この2年間すげぇ苦しかった。
でも、気づいたんだ。一番苦しかったのは莉乃だ。
そんなときに、側にいてあげられなかったオレは最低だ。
前に逃げるなってお前に言ったけど、逃げてたのはオレだった」
蓮はこちらへ振り向き近付いてきたと思ったら、急に頭を下げた。
「悪かった!オレを殴ってくれ!」
そう言う蓮に向かって、オレは迷わず右手を振り上げ
ペチッ
額にデコピンしてやった。
ポカンとした表情でオレを見る蓮に対して「あがってけば」と声をかけ家に入ろうとする。
「あの、オレこれからまた莉乃と知り合って、仲良くなって、必ず両思いになるから!
莉乃のことはオレが幸せにする!
だから、あんたは自分の幸せ掴めよ!」
「ははっ、プロポーズ?」
オレは真っ赤な顔をした蓮に笑いかけた。
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