おかえりなさい、先輩

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 教壇に立った第一声だった。小さくて聞き取りにくいけど、先輩らしい言葉。 「僕も、生きていてよかった」  だれかの息を飲む音が聞こえた。だれか、じゃなくて私のだったのかもしれない。 「不自由なことが増えてしまって。みんなに迷惑もかけると思う。そこは今のうちにあやまっておきたい」  ?に流れるものを、私はぬぐってはいけない。だれかに指さされても、泣いてやんのと茶化されても。先輩はここにいるから。 「それから、僕は水泳部にいたんだけど。あれからすっかり水がこわくなってしまったんだ」  教室がざわついた。激しい運動は禁じられたと聞いていたけど。わかっていたけど、とてもさみしい。 「恥ずかしい話、風呂に入るのも命がけなんだ」  しばらくしんみりしていたけれど、何人かが吹き出した。リカなんかは「そんなアホな!」と合いの手までいれた。それにつられて緊張感がほどけていく。みんなリラックスした笑顔になった。  ひとしきり、笑いがおさまってから先輩は一呼吸おいてふたたび口をひらく。 「水に入るのがこわいのは本当。水面を見ると手足が震える。選手として泳げなくなった悔しさのせいかもしれない。けど僕は水泳部に戻ろうと思ってる」  マジで? なんで? みんなが疑問符を先輩に投げかける。     
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