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その手がかりが指す先
小さなレモンの絵と、「LEMONMINT」という英語。
2枚あるそれを、欅の葉の間からこぼれ落ちてくる光に透かしてみる。
日本では手に入りにくい海外菓子メーカーのものらしい。
春彦先輩かもしれない。
包み紙を持っていた。
だからあの時、欅の下にいたのはーー。
でも、秋羅先輩のつけていたシトラスの香りも、確かにあった気がする。
レモンミントの持ち主は、どっち?
ううん、違う。
私は、どっちだったら嬉しいんだろう?
結局昨日は、駅まで送るという2人の申し出を頑なに断り、逃げるように家に帰った。
聞く勇気もないし、どちらかだと分かってしまうことも怖くて。
帰りに少し無理をした右足首は、また痛みがぶり返した。
だから午前中に病院に寄って、今は校庭の欅の下。
悩んで夜更かししたせいか、ちょっと眠い。
風は柔らかく、初夏の匂いを連れてる。
欅の木陰、ちらちらと光が舞う芝生の上。
また心地よくてうとうとし始めた時、芝生を踏みしめる湿った音がして、振り返った。
「あれ、姫野さん」
「春彦先輩」
驚いた。
まさかほとんど人が来ない欅の下に、春彦先輩が現れるなんて。
「足、平気?」
「病院行ってきたんです」
「それなら安心だね」
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