その手がかりが指す先

1/4

49人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ

その手がかりが指す先

小さなレモンの絵と、「LEMONMINT」という英語。 2枚あるそれを、欅の葉の間からこぼれ落ちてくる光に透かしてみる。 日本では手に入りにくい海外菓子メーカーのものらしい。 春彦先輩かもしれない。 包み紙を持っていた。 だからあの時、欅の下にいたのはーー。 でも、秋羅先輩のつけていたシトラスの香りも、確かにあった気がする。 レモンミントの持ち主は、どっち? ううん、違う。 私は、どっちだったら嬉しいんだろう? 結局昨日は、駅まで送るという2人の申し出を頑なに断り、逃げるように家に帰った。 聞く勇気もないし、どちらかだと分かってしまうことも怖くて。 帰りに少し無理をした右足首は、また痛みがぶり返した。 だから午前中に病院に寄って、今は校庭の欅の下。 悩んで夜更かししたせいか、ちょっと眠い。 風は柔らかく、初夏の匂いを連れてる。 欅の木陰、ちらちらと光が舞う芝生の上。 また心地よくてうとうとし始めた時、芝生を踏みしめる湿った音がして、振り返った。 「あれ、姫野さん」 「春彦先輩」 驚いた。 まさかほとんど人が来ない欅の下に、春彦先輩が現れるなんて。 「足、平気?」 「病院行ってきたんです」 「それなら安心だね」     
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加