その手がかりが指す先

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部長でもある先輩は隣に自然と腰を下ろした。 「あの、先輩はどうしてここに……」 喉が渇いたみたいに掠れた声が出た。 手のひらの中の包み紙がかさりと言った。 やっぱりおととい、ここに来たのは。 「ここいいよね。時々来るんだ。人もいないし、受験勉強の息抜きになるから」 「そう、なんですか」 「でも姫野さんもここ見つけてたんだ? けっこう秘密の場所なんだけど」 楽しそうに笑った春彦先輩をまっすぐ見た。 チャンスは今しかない。 「あの、先輩」 「うん?」 息を吸った。 「これ……先輩、知りませんか?」 そっと手のひらを開いた。 陽の光に照らされた包み紙が音を立てた。 春彦先輩が少し身を乗り出した。 「……これ、どこで?」 春彦先輩が少し眉をひそめた。 心当たりがあるのだと分かる表情に、全身の神経がアンテナみたいになる。 「ここで、おととい……」 春彦先輩は静かに息を吐いて、それから包み紙をとりあげた。 「これ、……イタリアオーバル社のレモンミント」 知らずに握りしめていた手に力がこもった。 「姫野さん」 少し改まったような口調で、春彦先輩が名前を呼んだ。 「……はい」 「明日、もう一度、ここに来てもらえる?」 そう言うと、春彦先輩は私にレモンミントの包み紙を返した。 「明日」     
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