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その時、足元にバスケのボールが勢いよく転がってきてぶつかった。
「姫野」
秋羅先輩が私に気づく。
「足、大丈夫か?」
腕で軽く汗を拭うようにして、秋羅先輩が近づいてきた。
どうしよう、先輩の顔が直視できない。
顔が火照って、呼吸が乱れるみたいになって、胸の奥がきゅうっと苦しくなる。
思わず俯いてしまう。
「……やっぱり痛む?」
心配そうな声がすぐ近くから聞こえて、びくりと肩が震えた。
顔があげられない。
先輩が様子のおかしな私に戸惑ってる雰囲気が伝わってきた。
「姫野?」
そして先輩の手が、わずかに頭に触れた。
一気に顔の熱があがる。
きっと真っ赤だ。私。
そう思った瞬間、一歩退いていた。
まるで避けたみたいになって。
ハッと顔を上げると、少し傷ついたような瞳がメガネの奥から、私を見ていた。
「あ……」
これ以上秋羅先輩の前にいるのが怖くなって、震えた。
「ご、ごめんなさい……!」
何が何だか分からなくなって、その場から身を翻すようにして。
私は逃げ出した。
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