その手がかりが指す先

4/4

49人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
その時、足元にバスケのボールが勢いよく転がってきてぶつかった。 「姫野」 秋羅先輩が私に気づく。 「足、大丈夫か?」 腕で軽く汗を拭うようにして、秋羅先輩が近づいてきた。 どうしよう、先輩の顔が直視できない。 顔が火照って、呼吸が乱れるみたいになって、胸の奥がきゅうっと苦しくなる。 思わず俯いてしまう。 「……やっぱり痛む?」 心配そうな声がすぐ近くから聞こえて、びくりと肩が震えた。 顔があげられない。 先輩が様子のおかしな私に戸惑ってる雰囲気が伝わってきた。 「姫野?」 そして先輩の手が、わずかに頭に触れた。 一気に顔の熱があがる。 きっと真っ赤だ。私。 そう思った瞬間、一歩退いていた。 まるで避けたみたいになって。 ハッと顔を上げると、少し傷ついたような瞳がメガネの奥から、私を見ていた。 「あ……」 これ以上秋羅先輩の前にいるのが怖くなって、震えた。 「ご、ごめんなさい……!」 何が何だか分からなくなって、その場から身を翻すようにして。 私は逃げ出した。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加