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先輩が真っ赤になった顔を隠すように視線を芝生に落とした。
「ごめん……オレ、最低だよね……」
やっぱり、……違う。
手のひらの中のレモンミントを、見下ろして。
それからもう一度、しっかり先輩を見た。
先輩の目の奥を確かめるように。
ーー先輩は、先輩じゃない。
「……なんで?」
ぽつりと呟いた。
明らかに先輩が動揺した。
「いや、……魔が差したとかじゃなくて、」
「なんで……春彦先輩のフリしてるんですか。秋羅先輩」
目の前の先輩はぎくりとして、信じられない顔で私を見た。
「……なんで」
動揺のあまり、先輩は、……秋羅先輩は、掠れた声を出した。
「春彦先輩はさん付けで呼ぶし、それに、オレって言わない……」
秋羅先輩が愕然と、目を見開いた。
「あー……」
よろめくように、秋羅先輩がしゃがみこんだ。
「そっか、そうだ、った……。うわ……かっこわりー……」
近づいて、その隣にしゃがみこんだ。
「秋羅先輩」
そっと呼びかけると腕で覆っている隙間から、秋羅先輩が横の私の方を見た。
顔を赤らめたまま拗ねたような視線に、胸の奥が震えた。
先輩なのに、かわいいって思った。
「これ、先輩の?」
レモンイエローの包み紙を見せると、秋羅先輩が頷いて「うちにたくさんある」と呟いた。
だから、春彦先輩も、持ってた。
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