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「教えてください。なんで春彦先輩のフリしたんですか?」
諦めたかのように秋羅先輩が、ため息をついて。
「姫野は、……ハルが好きなんだっててっきり……だから」
「……だから、キスしたんですか?」
「なんつうか……ハルの園芸部に行くたび……ずっとかわいいなって思ってて……」
黙って見つめた。
「……だからあの時」
顔をあげた秋羅先輩が、覚悟を決めたように私に向き直った。
メガネをかけてないから春彦先輩と区別はつきにくい。
でもその奥の優しく涼しげな光は、保健室で見つけた時のものと同じ。
「どうしても、キスしたくなった」
甘酸っぱいレモンミントの味を思い出す。
「……ごめん、ハルじゃなくて」
秋羅先輩は小さな声でそう言って俯いた。
先輩は、私が春彦先輩じゃなかったことにショックを受けてると思ってるらしい。
違うのに。
その腕に触れた。
先輩が私の目を見る。
「許さないです。……でも」
秋羅先輩が一瞬泣きそうに瞳を揺らした。
静かに息を吸う。
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