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キャンディの持ち主
その日から犯人探し。
だって、私のファーストキス。
誰かも分からない相手に奪われた。
手がかりは、レモンミントのキャンディ。
放課後は私が所属する園芸部がある。
校庭の花壇に水をまいていると、穏やかな声がした。
「あ、虹ができてる」
「春彦先輩」
どきりとして振り返ると、微笑んで立っていたのは、うちの高校トップのイケメン先輩。
制服をきちんと着こなした生徒会長で、園芸部の部長。
いつも優しい微笑みを絶やさず、抜群のルックスと親しみやすさに、女子はみんな憧れている。
もちろん、私も。
「姫野さん、水やりはそのくらいでいいよ」
「はい」
密かに先輩に憧れて入部した。
なんてことは言えない。
だから、春彦先輩がレモンミントの持ち主だったらいい。
そんなことありえない。でも。
思わず先輩の美形すぎる端正な顔をじっと見つめた。
「僕の顔、何かついてる?」
不思議そうな声に、ハッとする。
「あ、いえ。すみません」
顔がカアッと熱くなって、慌てて頭を振った。
春彦先輩が、にっこり笑った。
先輩。
先輩はレモンミントのキャンディ持ってたりしませんか?
なんとなく言いかけた時、「ハル」と声がした。
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