レモンミントの落とし物

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レモンミントの落とし物

レモンミントの持ち主は見つからない。 「困った……」 レモンミントのキャンディをもってる男子、なんてそう簡単に見つかるわけがなかった。 しかも本当に男子? もしかして女子? 先生? 学校に関係ない人? いやそれよりも勘違い、それか夢の続きだったとか? ポケットに入れた包み紙を取り出した。 海外のお菓子らしく、お洒落なデザイン。 それを見ながら廊下を歩いていたせいで、階段と交わる廊下の角まで来ていたことに気づかなかった。 ドンッ! 「!」「!」 ちょうど階段を降りてきた誰かに正面からぶつかって、尻もちをついた。 痛い。 「あ……ごめん」 静かな声が降ってきて、顔をあげた。 秋羅先輩。 「あれ、姫野さん。大丈夫ー?」 と、春彦先輩が秋羅先輩の後ろからひょいと心配そうに顔を出した。 「すみません……!」 慌てて立ち上がろうとして、右足首に激痛が走った。 「っ!」顔をしかめた私に、秋羅先輩がかすかに顔色を変えた。 「大丈夫か?」 「足首かな」 秋羅先輩が私のそばに屈んで、足首に触れた。 そのひんやりとした指先は、すらりと長くてきれい。 「あ、あの、大丈夫です」 急に恥ずかしくなって、わずかに身を引いた。     
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