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校内ツートップのイケメン先輩2人がいるだけでも注目をあびる。
しかも2人に囲まれていればなおさらだ。
もう一度力をこめようとして、泣きそうになった。
右足首に力が入らない。
じんじんするし、熱も持ち始めてるみたいだった。
「ハル、彼女保健室に連れてく」
急に視界がぐんっと上がった。
ふわりと、どこかで覚えのある香りが漂った。
いつのまにか秋羅先輩が私のことをお姫様抱っこしている。
周りの女子たちが黄色い悲鳴でざわついた。
「せ、せせせ先輩! 待ってください、おろしてください!」
「姫野さん、おとなしくアキに連れてってもらって。足首は甘く見てちゃダメだよ」
目をしろくろさせているうちに、秋羅先輩が保健室に向かって歩きだす。
あまりにも恥ずかしくて、顔から火が出そう。
「顔伏せてるといい」
囁くような優しい声に、思わず先輩を見た。
思ったよりも間近に整った顔があって、息をのむ。
秋羅先輩がメガネの奥から私を見て、ふっと笑みを浮かべた。
初めて見る、秋羅先輩の笑み。
春彦先輩のように優しくて、でも、地面に落ちた欅の葉陰のように涼し気な。
胸の奥が張り裂けそうなほどドキドキしてる。
余計に顔が熱くなって、顔を伏せた。
その時また、漂った。
甘酸っぱいシトラスの香り。
秋羅先輩からのようだった。
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