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春彦先輩が3つものカバンを手にしている。
「あ、ありがとうございます!」
慌てて立ち上がった私を、秋羅先輩が制した。
「おとなしくしてて」
秋羅先輩が春彦先輩から私のカバンをひきとった。
そして私の所まで持ってきてくれる。
こんなに優しかったんだ。
どんどん秋羅先輩の印象が変わる。
「姫野さん、足首どう?」
春彦先輩が心配そうに包帯が巻かれた足首を見下ろした。
「とりあえず秋羅先輩に手当してもらったので、なんとか」
「アキはバスケ部でこういうの慣れてるから」
「いや慣れても困るけど」
秋羅先輩が苦笑する。
そんな様子が見られるのも、きっと春彦先輩がそばにいるせい。
「腫れがひくといいんだけど」
そう言って春彦先輩がのぞきこむように腰をかがめた。
その瞬間、春彦先輩から何かがはらりと落ちた。
小さな紙。
レモンイエローの色。
心臓が音を立てて跳ねた。
まさか。
制服のポケットを探ると、包み紙に指が触れた。
私のは、ある。
ということは、そこに落ちているレモンイエローの紙は。
春彦先輩は落ちたのに気づいていない。
どくどくと、心臓が音を立てている。
混乱しながらも2人に気づかれないうちにさっと包み紙を拾い上げた。
やっぱりあのレモンミントの包み紙。
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