第二章 追い打ち

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 そうして今日もいつものごとく自席について、パソコンの電源を入れている自分がいた。課長は今日は出張で不在で、それだけで心が穏やかになる。ブイン、と低い音がし、ディスプレイがちかちかと瞬き出す。入社して以来ずっと使っているこのパソコンは、最近少し動きが悪い。なかなかパスワードを入れる画面にたどり着けない。フラッグのはばたくお決まりの画面を見ていると、「おはよー」と言いつつ背後を通りかかった同期の菊池に即刻忠告された。 「そろそろパソコン買い替え時じゃないのか? 早めにIT部に申請しとけよ」 「ああうん、そうだね。そうするよ」  その申請書一つ作るのすらおっくうになっているのだが。 「そういや、樋口はあれ行くよな?」 「あれ?」  さて、今夜は飲み会でもあったかと頭をめぐらしかけたところで、「だからあれだよ」と言いつつ菊池がぞんざいに隣の席に座った。 「斉藤の結婚式、行くだろ?」  言葉を失ったわたしの様子に気づくほどこの男は繊細ではない。でなければいくら隣の席で同期といえども、わたしのような職場で浮いている女に気軽に声を掛けられるわけがない。海外気取りか、カフェで購入した淹れたてのコーヒーを飲みつつ自席のパソコンの電源を入れる仕草はまったくもっていつもどおりだ。  菊池のパソコンは大した時間もかけずに起動が完了した。長く複雑なパスワードを高速で入力しながら、器用に話を再開させていく。 「斉藤、披露宴で同期のテーブルを一つ作りたいんだってよ。できちゃった婚で急いで式を挙げることになったから、人を集めるのに正直苦労しているんだってさ」     
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