第一章 死にたい

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 ふらふらとした状態で、それでも一人暮らしのアパートにたどり着いたものの、わたしはただ虚ろだった。朝、あのメールを読んでからずっとこんな調子だ。死ぬ前にやりたいことすらない。だけど死ぬのも面倒だ。ここに帰ってきたのも惰性のようなもので、蹴りつけるようにパンプスを脱ぎ捨て、鞄とジャケットを放り投げるやベッドに倒れ伏した。 「どうしよっかな……」  大きくため息をつくとともに、盛大にお腹が鳴った。  ぐううううう。  やけに長くてみっともない音だ。死にたい死にたいと言いながらも、おなかはしっかりと減っている。いつまでもぐるぐると動く腸の感触がそのことをわたしに告げてくる。体は正直で無遠慮だ。食べろ食べろとしつこく命令してくる。  でも。 (たしか……本当に心がまいったときはおなかがすいたなんて思わないはずだよなあ)  と、いうことは。  わたしはまだまだ限界に達していないということなのだろうか。  そう思うと、途端に目の前が真っ暗になった。 (……これ以上のことがあるの?)  これだけ疲れて絶望して。  大切な人を失って。  これ以上、他にどんな苦しみがあるというのだろうか。  考え出すと頭がきーんと痛み、自然と涙がにじんできた。それに伴い吐き気がしそうなほどの強烈な空腹感が、腹の奥底へと吸い込まれかき消えていった。     
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