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第一章 死にたい
「死にたい……」
この言葉が定常文句となってしまったのはなぜだろう。
死ぬという望みをこんなに簡単に口を出せてしまうわたしはどこかおかしいのかもしれない。だけど自分ではもうどこがおかしいのか分からない。分からないけれど、気づけば同じことばかりが思い浮かび、同じ言葉ばかりが口から漏れるようになっていた。
「ああ……。死にたいなあ……」
そんなことをつぶやきながら夜道をとぼとぼと一人歩く女、それがわたしという人間だ。
*
今日はいつも以上に悲惨だった。
出社直後に課長に呼び出され、不出来な仕事内容について散々に責められたのだ。しかも朝一からだ、朝一。窓の向こう、きっぱりとした青空を背にした課長に「こっち来い」と呼ばれた瞬間、一気に萎えた。まだ朝で、しかも久しぶりの晴天だというのに、それだけで深夜零時のやるせない気分にまで落とされた。
のろのろと机に鞄を置き、課長の前に従順に立ってみせた瞬間、恒例となりつつある説教は唐突に始まった。
「お前さあ、この書類誤字が多すぎだろ。それにこの企画書はなんだ。新入社員みたいなものをいつまでも書いているんじゃないよ」
おはようの挨拶もなしでいきなりこれだ。
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