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「お兄さんは、好きな女性とかいないんですか?」
突然、樹に振られた話に光弘は戸惑った。
――好きな女性。
彼はパッと顔を上げてすぐに答えを出した。
「なんだ急に!そんなのいるか!妹が命だからな!」
あまりの言い切りように樹は苦笑いすらできなかった。
そこまできっぱりしているのもどうかと思うのだが、今の光弘はとにかく汐里一筋なのだ。
こんなにも兄に纏わりつかれるのは迷惑千万である。
「そうなんですか。僕が誰か紹介してあげましょうか?」
「お前に紹介してもらう筋合いはない!」
「だってお兄さん、考えてみてくださいよ。いつかは妹さんも独り立ちするでしょうし。
それに自分で探すって言ったって見る目ないでしょ?少なくとも僕の方がありますよ」
確かに、言われてみればその通りかもしれない。何から何まで気に障る男だ。
光弘はムカムカした気持ちを抑えられず、グラスを傾けてはもう一杯、また一杯とカクテルを追加でオーダーした。
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