プロローグ:嵐の前の静寂

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 その日は、とてものどかな昼であった。  雲一つと無い空。唯一無二を主張する太陽が、大量の光線を大地に注ぐ。  机と椅子が規則正しく並べられた部屋に、沢山の人間が行き来しつつ、和気藹々と雑談に花を咲かせている。  だがその中で、鬱陶しい日差しに当てられながら机に足を乗り出し、椅子を背もたれ代わりにくつろぐ少年が独り。 「……暇だ」  尚も眩しく光線を浴びせる太陽に瞼を細め、紅の瞳が一瞬輝くものの、少年の表情はひたすらだらしない怠惰に彩られていた。 「暇なら皆の輪に入れば良いじゃない。ツンケンしてると友達できないわよ」  聞き覚えのある声に、少年―――流川澄男(るせんすみお)はほんの少し身を起こす。一つ前の席に座る女生徒を、眠たそうな目で睨んだ。  きっちり整髪した髪型からは清楚さが伺えるが、何より彼女自身が、とても端麗であった。  顔立ちも平均以上。プロポーションもクラスメイトの女子の中で、最高級は折り紙付き。  服装の乱れはなく、人並み程度のお洒落も欠かさない。もはや美貌に隙はなく、まさに淑女。  ただ強いて欠点を述べるなら、一緒にいる男が容姿、第一印象ともに不釣り合いな事くらいか。
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