15人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
その日は、とてものどかな昼であった。
雲一つと無い空。唯一無二を主張する太陽が、大量の光線を大地に注ぐ。
机と椅子が規則正しく並べられた部屋に、沢山の人間が行き来しつつ、和気藹々と雑談に花を咲かせている。
だがその中で、鬱陶しい日差しに当てられながら机に足を乗り出し、椅子を背もたれ代わりにくつろぐ少年が独り。
「……暇だ」
尚も眩しく光線を浴びせる太陽に瞼を細め、紅の瞳が一瞬輝くものの、少年の表情はひたすらだらしない怠惰に彩られていた。
「暇なら皆の輪に入れば良いじゃない。ツンケンしてると友達できないわよ」
聞き覚えのある声に、少年―――流川澄男はほんの少し身を起こす。一つ前の席に座る女生徒を、眠たそうな目で睨んだ。
きっちり整髪した髪型からは清楚さが伺えるが、何より彼女自身が、とても端麗であった。
顔立ちも平均以上。プロポーションもクラスメイトの女子の中で、最高級は折り紙付き。
服装の乱れはなく、人並み程度のお洒落も欠かさない。もはや美貌に隙はなく、まさに淑女。
ただ強いて欠点を述べるなら、一緒にいる男が容姿、第一印象ともに不釣り合いな事くらいか。
最初のコメントを投稿しよう!