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1年後
結婚を前提に付き合い始めたという、ジェドにとってはネイのためについた優しい嘘だったはずの、実は甘い罠に捕らわれて、1年が過ぎた。
もともと憎からず思っていた相手でもあり、思いを受け入れるのにそう時間はかからなかったが、ネイとしては、騙されたという思いがあり、釈然としない。
「どうですかな、その後。進展は」
わざわざ政王執務室まで来たルデオに聞かれて、ネイは頬杖をつきながら、もう少し考えたい、と言った。
「そうですか。まあ、すぐにどうこうしろとは申しませんが、結婚する意思が消えたのかどうか、はっきりしていただけると助かります」
ジェドが言った。
「結婚の意思は消えない。ただ1年後だからという理由で踏ん切りは付かない。もう少し待ってほしい」
ルデオは頷きながら言った。
「そうですな。結婚の意思がおありならばいいのです。それでは失礼します」
ルデオが部屋を出ると、ジェドが言った。
「ネイ。話があるから、夕食のあと時間をくれ」
「ああ、分かった」
ネイはなんだろうかと思ったが、結婚についての考えが頭の大部分を占めていて、あまり気に留めていなかった。
いつものように一緒に夕食を摂り、談話室へ行こうとしたネイの手をジェドが掴んだ。
「個室を用意させた。こっちだ」
そうして5階まであがり、白剱騎士居室に招かれた。
その部屋には、壁際に一脚長椅子があったが、ネイは特に深く考えず、部屋の中央にある寝台に座った。
そのまま考えに沈むネイの隣にジェドが座る。
「何に引っ掛かってる?」
ジェドが聞くと、ネイは息を吐いた。
「いつの間にか後戻りできない現状に。その場しのぎで嘘をついたことを後悔している」
ジェドがネイの髪留めを外した。
最近、よくやられるのでネイは気にしなかった。
「本当に後戻りできない状況とは今のようなことを言うんだ」
「ん?」
ネイがジェドの方へ目を上げようとしたとき、肩を掴まれ、上体を後ろに倒された。
時を移さず口付けられ、ついいつものように応えていると、何やら服をいじられているのに気付いた。
片手でジェドの頭を掴んで無理に反らすと、何してるんだい、と聞く。
「本当に後戻りできない状態に追い込もうとしている」
そう言って身を起こしたジェドの手には腰帯があった。
見ると、ネイの上着は釦をすべて外されていた。
ジェドはその上着に手をかけて、取り去ろうとする。
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