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言えないこと
自転車を走らせた先は、自宅から二十分ほどの距離にある駅。
駐輪場に自転車を止めると、僕は切符を買って電車に乗り込む。
数駅先の駅で降りると、あるビルを目指して歩く。
海里おじさん、どうしてるだろう…。
そう考えてから頭を振る。
おじさんの事は考えないようにしよう。
だけど、少しでも頭に隙があると僕はおじさんの事ばかりになってしまう。
困っていて悩んでいるはずなのに、僕はおじさんの笑顔しか思い出せない。
現実逃避って、こういう事なのかな?
そうこうしているうちに、僕の足は目的地へ辿り着きビルを見上げていた。
ここは、お母さんが働いている職場だ。
外資系の企業で、スーツ姿の男女が颯爽と歩いている。
さすがにビルへ入る勇気が無いので、お母さんへ電話をした。
耳に当てているスマホが呼び出しを行っている。
暫く待ってから『結斗!?どうしたの?』と驚かれた。
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